番外編:セカンドライフって電通が流行らそうとしたアレでしょ?というあなたに(前編)

僕にセカンドライフ(老後の人生じゃない方)の話をさせたら長くなりますよ

 ※ 記事タイトル改題しました。詳しくは次の記事

 この記事は僕に「○○」の話させたら長くなりますよ Advent Calendar 2016 – Adventarの10日目の記事です。
 普段、SL(セカンドライフ)ユーザーに向けて人気ユーザーのインタビュー記事をお送りしているこのブログですが、このアドベントカレンダーセカンドライフをテーマにエントリーしましたので、ちょっと番外編ということでSLユーザー以外の方に向けて、久しぶりに真面目な紹介記事を書いてみようと思います。

で、セカンドライフって何だっけ?

 日本で話題になったのが2007年ですから、もう10年も前ですねえ。一言で言うと「仮想空間サービス」。3DCGの空間の中に自分の分身であるアバターを配し、着飾らせたり他のユーザーとチャットしたり、周囲の空間自体をデザインしたり……イメージ的には「戦闘システムの用意されていないMMORPG」というのが近いかもしれません。

Kowloon Sky Byke 08 サイバーパンクエリア「Kowloon」で撮影した筆者のアバター

 ただ、その話題のなり方があまりによろしくなかった。2007年当時に電通がコンサルやっていろいろな企業がかってもわからぬままに参入しちゃったという経緯がありまして、 結果

  • 電通やメディアがブームを捏造している。
  • 海外でブームらしいがアバターがきもくて日本人の美的感覚に堪えるものじゃない。
  • 右も左も広告だらけで、金がないと何もできない。
  • 持て囃しているのは電通に騙されて参入したもののそれまでのサンクコストを惜しんで撤退できない業者ばかり

というイメージが出来上がってしまったのが辛かった。それらのイメージの決定版ともいうべきニュース記事が、有名なこちらです。

Second Life“不”人気、7つの理由

 さらに、同時期にニコニコ動画VOCALOIDといったUGCが盛り上がりを見せていたのも不人気に拍車をかけました。ユーザー主導で盛り上がるニコ動、企業主導で盛り上がらないSLという構図が完全に出来上がってしまったのです。

それで、本当のところどうなの?

 ですが、本来のSLの姿はむしろ、UGCの権化ともいうべき存在。何しろ、運営が提供しているのは「空間」そのものとその中でオブジェクトを作れるという「仕組み」のみ。地面を盛り上げ、木々や建物を置き、仮想空間の中に千差万別な光景を生みだしているのは、ほとんどが一般ユーザーなのです。

Corruption セカンドライフの「写真家」、Loverdag氏のflickr Photostream

 もちろん、光景だけではありません。キモい、バタ臭いと揶揄されたアバターですが、当時すでに日本人ユーザーが手をかけて日本人好みの質の高いアバターを提供し始めていました。
 そして、メタセコやブレンダーなどの外部CGモデリングソフトを使ってアバターを作れるようになった今では、精緻で美しいアバターやアニメ風キャラアバター、極大・極小サイズアバターなど様々なアバターを自由に選ぶことができます。

smile :) 現時点で最高峰クオリティアバターの一つ。日本人の製作によるものです。

Old school girl こちらも日本製の、アニメキャラ風アバター

 こうした質の高い造形に寄与した要因として大きいのが実は、2007年当時に参入した日本人、それも企業ベースではなく個人ベースで参入した人たちでした。
 企業が微妙なエリアを作っては人が来ないと嘆いているのをよそに、繊細なデザインのアバターや服、アクセサリなどを安価*1で販売し始めた日本の個人ユーザーにより、SL内の造形のクオリティは急速に上がっていきました。
 当初、あまりに安価なために「相場破壊」と海外勢から非難されることもありましたが、結局はそれが質の高い造形の普及に一役買い、それが買い手の審美眼を養い、より質のいい物を求める声に応じて作り手の側のスキルも意識も上がっていき……と正の循環を生んだのではないかと私は思っています。

セカンドライフの中の日本人

 このブログの他の記事でインタビューしているのは、そうした日本人のSLユーザーたちです。もともと、2007年当時にセカンドライフで活動していた日本人ユーザーにインタビューする「People of SecondLife」というブログがあり、そのコンセプトを引き継いで、それより後からSL内で活動するようになった人を選んでインタビューしています。
 第1回と2回は、上で述べたようなオブジェクトクリエイターの典型例。どちらの方も、商品を展示販売するエリアの維持費*2を賄って余りあるほどの収入を得ています。
 3回、7回はSL内で活動する様子を動画キャプチャし、編集して「映画」を作っている人たち。こうした「映画」はMachine+Chinema+Animeで「マシニマ」と呼ばれます。そして6回は、こうしたマシニマクリエイターを支援し、上映イベントを定期開催している「映画館組合」の主催です。
 さらに4回・5回はSL内のゲームイベントの運営者。SL内で作成できるのは上で挙げたようなアバターやオブジェクトだけではなく、それらの挙動を制御するスクリプトも組み込むことができ、そうした制御を組み合わせることで、ゲームの戦闘システムやクエストのようなものも実現することが可能なのです。  この他にも、服を作る人、ヘアスタイルを作る人、アバターのモーションを作る人、カフェやクラブを経営して集まってくる人たちをもてなす人、そうした技術を教える人……セカンドライフの中にはまだまだ多くのすごい日本人がいます。このブログでももっともっと、そういう人たちを取り上げていければと思っています。

 最後になりましたが、実は私もオブジェクトやらマシニマやらを作ったりしています。下に貼るのは私の作った動画。セカンドライフ内の様子の動画と、同じく3DCGアニメーション動画を作るのに便利なツール「MikuMikuDance」で作成した動画を組み合わせたもので、セカンドライフの「ものづくり」の原点を紹介した作品です。ニコ動のアカウントのある方はご覧いただけたら幸いです。

*1:制作されたオブジェクトは有料で「販売」されるのが一般的で、その売価は100%作り手の収入となります

*2:運営元Linden Lab.に支払われます